数名の友人が若い企業家を育てようと、ファンドまで用意して財団をたちあげた。たまたま日本に来ていたので、ついでに仲間にシリコンバレイ の話をしたくれというので、シリコンバレイでの起業の仕方、資金の集め方、ベンチャーキャピタル の活動などの話をした。

シリコンバレイでの起業はまず個人、あるいは数人の仲間で新しいアイデヤ をねりあげます。これが一番重要でいろいろ資料を集めたり、マーケット調査をしたり、あるいはポテンシャルのお客になりそうな会社の人に意見をきいたりします。特許 をとるための調査も十分におこないます。6ヶ月から1年あるいは2年かかることもあります。そして資金集めにかかります。個人の投資家をエンジェル とよんでいます。 5千万えんから1億円ぐらいの目標で金を集めます。この段階では自分たちで出せる資金。 そしてエンジェル投資家、あるいは企業の経営者などの友達からお金をあつめています。

これらのお金は融資でなく投資家がリスクを自分で負って出す、お金です、ですから返す必要のないお金です。見返りは 会社が上場したときに株式市場から換金できます。またM&A によって他の会社が買収しますとその時に大きな見返りがもらえます。最近ではVideo Distribution の会社などが開業して1年にもならない会社が数百億とか一千億とかというような価値で買収されることもあります。 シリコンバレイあるいはアメリカにおけるベンチャーへの投資はあくまでもリスクマネーです、すなわち会社がつぶれたら一文にもならないのです。そんなわけで SEC(証券取引委員会)ではベンチャーに投資する人の資格を規定しています。 すなわち年収が二百五十万ドル以上、あるいは資産が一億円以上の個人でなければいけないとなっています。貧乏人が投資してあとで困ってしまうといけないからです。

ですからシリコンバレイあるいはアメリカ で集めた資金は返す必要のないお金です。善意であるいは利他の気持ちで投下されたお金なのです。しかしベンチャーの成功の確率は1% にも満たないものです。エンジェル投資家は投資したお金で大儲けしようという考えはほとんどありません。むしろ若い起業家を助けたい、あるいは彼の夢に共感するので投資するのです。

こんな説明をしたら友人たちの大半がびっくりしていた、とにかく返却する必要のないお金が存在するのが不思議のようでした。

懇親会の時いろいろきいてみると大半のひとが親の借金を数億もかぶってそれを返すのに大変苦労した、自分の会社の運営のほかに 夜の道路工事、レストランンの、ウエイター などをして昼夜休まづにがんばってやっと借金を返した。そして会社の運営をコツコツとして売上をのばして今日やっと安泰になったのだと。まさしく失敗を許さない社会のなまなま しいはなしでした。

わたくしが起業の大半が失敗に終わりそして各々が数億円つかってついには会社をしめたいう話を聞いてむしろそんな起業家はけしからんといった感じを持ちながら聞いておられたように思う。日本では失敗は許されないし一度失敗するともう二度と立ち上がれないという社会通念が厳然としてあるのをひしひしと感じさせられました。ですから失敗を恐れずがんばろうとか一度、二度の失敗を恐れずに頑張ろうという掛声があまり現実味のあるものでないことを実感させられました。

だから日本での起業は大変だなあーとおもいました。リスクマネーを出してくれる資産家があまりいないこと、日本でも資産家はたくさんいるはずですが。投資のほうも失敗は許されないのですね。だから土地などあるいは国債などの価値がゼロにならないものにしか投資しないのです。 資金の運用もリスクの大きな株式投資にはされていないのです。アメリカの資金運用が株式投資がメイイン になっているのとの大きな違いです。企業の年金などの資金が株式投資にむけられています。そしてまたそのお金がベンチャー キャピタルのところにも回ってきているのです。アメリカでは一度、二度の失敗はなんということはないのです。しかも大きな失敗をした人ほど人がまた投資をしてくれるチャンスがおおいようです。それには失敗の原因を十分に検討して次は同じような失敗をしないという確証があるのでしょう。

日本もそろそろ一度、や二度の失敗をゆるして若き起業家をサーポートしてほしいものです。そしてもっともっとベンチャーキャピタル に資金を投下してほしいものです。アメリカの ベンチャーキャピタルの年間の投資額は年間3兆円以上もあります。そした年間4千社ほどのスタートアップ に資金が投下されています。そしてほぼ一社平均すると7億円以上の投資となっています。新しい技術、新しいビジネスモデルには少なくともこれぐらいの資金がひつようですね。それに比べて日本のベンチャーキャピタル は年間わずかに二千億円ですよ。これでは一社当たりはわずかな金額しか投資できないです。

スタンフォード 大学のダシャー先生が日本の企業のIPO までの期間を調べたらなんと20年だという話をされていた。またシードマネーがおじいちゃん、おばちゃんからもでている場合がるとのこと。おじいちゃん、おばあちゃんは かわいい孫のために箪笥貯金をしているのですね。たしかにオレオレ 詐欺でおばちゃんが 一千万もだまし取られたという話が新聞に出ていることからもうなずけるところです。 桃太郎も鬼が島に鬼退治に行く時はおばちゃんの投資(きび団子)があったから、犬や猿や雉 をやとえたのです。若い起業家の皆さんとりあえずおばちゃんにあたってみたら、その前におばちゃん孝行もおわすれなく。

日本の企業のIPO までの時間が20年もかかっているのはベンチャーに投下される資金が少ないしかもその後の発展のための資金が銀行融資しかないことによるものとおもわれます。先ほどの友人が親の借金を背負って借金を返しそしてコツコツ自分で稼いだ金を元にして発展の資金としてきたことまた銀行借り入れで運転資金を借りているので企業の運営をものすごく慎重に行い不渡りを出さないような慎重な会社経営をしてきているのでIPO までの時間がますます長くなっているのです。稲盛さんが京セラを始められる時に篤志家が資金を出してくれたようです。 たぶん数百万円ぐらいではないだろうか。いわゆるエンジェルですね。 その後は自社の利益と 銀行融資で発展させたようです。 上場した時も市場からはそれほど大きな金を集めたという話しを聞いていないのでその後は自助努力によって大きくなったのです。そしてそれで世界に冠たる企業に成長していることはいかに経営がうまかったかということだとおもいます。日本の大企業は財閥企業意外は 大なり小なりこのようにして大きくなったのでしょう。

スタートアップ の資金調達は 最初のシードマネー をエンジェル投資家から数千万から一億ぐらいでスタートしてその後1年以内に3億円から 5億円 ぐらいあつめます。このお金でプロトタイプを作りあるいはインフラのソフトの開発を終えるように努力します。そのごいよいよ商品の販売あるいはソフトウエアーの販売などの次のステップ にうつります。そして次に本格的な量産販売にうつります。このあたりで10億から30億円の資金調達が必要になります。このころには多くのベンチャーキャピタルにお願いして資金をあつめます。そして売上をあげて利益をあげ自給自足できるようにしないといけません。

日本では第二弾の3億とか5億がまずあつまらないのでこのあたりが銀行融資でまかなわれていたようです。だから日本の経済はこのように大手の銀行によってサポートされていたのです。そしてこの融資を受けるための人と人のかかわりあいが重要であったのです。融資は現実にはアカントレシイーバブルのかたがわりで 補償金みたいなものだったのでしょう。スタートアップの企業が大きな商売をするのに結局は数億円の補償金が必要だったのです。

出光 佐三 の伝記を小説化した "海賊と呼ばれた男“を友人が読んで初めから終わりまで涙を流しながら読んだのでぜひ平さんにも読んでほしいと言ってわざわざ日本からおくってくれた。いや素晴らしい本だったというかなんと素晴らしい人間がいたものだとところどころ涙を流しながら読んだ。 この本を読んでなるほど日本では絶対に失敗してはいけないのだときがついた。失敗しないために死に物狂いで事業をする、そして従業員をだいじにし、従業員を家族のように最後まで面倒をみる。出光 佐三 は小説のなかに国岡鐵造 というなまえででてくる。鐵造には日田 重太郎というメンター がいた。日田は 国岡鐵造の人物を高く評価しその評価を一時もくずすことはなかった。日田重太郎は 淡路島の資産家だったが実家との折り合いが悪くひとりで神戸で生活していた。そして自分は仕事もせずに茶や骨董を楽しむ風流人であった。鐵造は従業員数名の酒井商会で活躍するのですが。実家の凋落を知って独立をかんがえます。しかしお金はないのでどうしたらいいのか迷っていました。それを感知した日田が京都の別宅を8千円で売って6千円をお前にやるから独立しなさい。という当時の六千円というのは今の六千万ほどの額になります。鐵造はそんな大金をただでもらうわけにはいかないと返済など条件を決めようとします。しかし日田 はそれはお前にあげるのだといいます。そしてそれなら次の3つの条件をいいます。

1) 家族と仲良く暮らすこと。
2) 自分の初志を貫くこと
3) このことは誰にも言わないこと。

このお金で鐵造は機械オイルの商売をはじめます。これが鐵造が石油の商売にかかわるきっかけとなります。恩師から頂いた 士魂商才 (武士の精神で商売をやる)の額を掲げてがんばります。

しかし3年たっても一向に売上があがりません。 そして日田からもらった6千円も底をつきます。愈々会社を閉める覚悟で日田に深深と頭を下げて日田さんもう駄目です店をしめます。いただいたお金を使い果してしまいました。と言います。日田はそうかと言って二人で門司のまちを海の見えるところまであるいていきます。そして日田は 鐵造さん神戸のうちを売れば7千円になる、鐵造さんこれでもう一度頑張りなさい。と言ってまた7千円を工面します。そして日田は鐵造さんとことんやってみろそしてそれでもだめなら“一緒に乞食やろうよ”。といった。鐵造は感激で言葉にならなかった。

いや! 素晴らしいこんな人がいたものですね、あるいは鐵造という男の魅力がすばらしかたのか。その後鐵造はいろんな苦労を経ながら大きくのびていきます。 いつも部下を思いそして国家を思いながら事業に邁進します。

その後の鐵造は 石油の確保のために大変な苦労をします。戦後の日本はアメリカからの石油の割り当てで何とか産業が維持されていました。 欧米の石油メーカー大手7社が 7人の魔女と呼ばれて日本の石油産業を牛耳ろうとして日本の石油会社に資本を入れ合弁会社を作り持ち株比率大きくもって進出してきます。 鐵造にはそれがわかっていたのでこの7人の魔女との戦いをくりひろげます。 またGHQ が欧米の大手の後ろ盾になったりしているのでその戦いは大変なものでした。 しかし日本の将来のために鐵造は必死にがんばります。 GHQにも殴りこみにいたり、日本政府にも絶えず意見をぶっつけていきます。日本のため将来の日本の石油政策のためにこれほど頑張った人はなかってことでしょう。そしてこの石油のための戦いに全神経をつかいます。 ひとつ間違えば石油産業は 7人の魔女のために日本の復興がおくれてしまします。そしてこの戦いのために大型タンクの 手だって、そしてついには大型精油工場の建設とどれも大きなお金のいるプロジェクトでした。 もしこの戦いに負ければ日本の復興はおくれてしますのです。国家のために一大時です。 鐵造はいつも国家のためを第一考えて大きなリスクを自分でかぶって勝負にでます。それにはまた大型タンクの買収には国岡商店のはるかに及ばない資金が必要だったのです。ここでも資金源は大手の銀行だったのです。日本経済は大手の銀行によってささえられていたのです。銀行の頭取の裁量によってなん百億という融資が決済されていたのです。 その後も大型精油工場をつくる時もまた大きなお金がひつようです。そのつど鐵造の信念と国を思う 意気に感じて融資が決まっていき産業の基礎が次々うちたてられています。そして圧巻は 日章丸 の建造です。そしてイラン がイギリスからの圧力で石油が 輸出できない時に鐵造は 日章丸を イランのアバデーン に向かわせてイランから大量の石油を購入します。 イランはこの時イギリス から経済封鎖さされており日章丸が石油を大量に買い付けた おかげで国の経済がすくわれたのです。日本はこの時イランの救世主となったのです。

とにかく資金繰りの難しい日本の社会でこれほどの苦労をして個人で国を支えて人はなかってのでしょう。とにかく日本での起業はいつもこの資金源の確保に大変苦労してきたのです。もっと機関投資家が企業をサポートして産業を活性化しないと一個の企業一人の個人でできるこの荷は限界があります。鐵造のチャッレンジ は素晴らしい、それも国家のためという大義名分をいつももっていたからできたのでしょう。昭和というときは終戦後の経済の建て直し相当な苦労が大きかったのです。これからはもっと資金調達がやりやすい社会にしていきたいですね。それにはベンチャーキャピタルにもっと資金を投下してほしい。不動産で儲けているところなどは少しは ベンチャーキャピタルにお金を投下してほしいですね。そうすれば アップルとかあるいは第二の京セラ などのような大きな会社ができて経済をささえてくれるのではないかとおもいますが。

この本を読んでエンジェル投資家として投資した 二人の起業家のことがおもいだされます。一人は ハイエンド のイメイジ プロセッサー の開発の会社、もう一人はオンラインイーコマス 二人ともがんばって事業を大きく育っててくれそうな人物でした。自分のお金をある程度とほかのエンジェルさらに 台湾のベンチャーキャピタルからお金を入れてもらいました。 しかしイメイジプロセッサアー のほうはなかなかソフトに開発がおわりません。次から次えと問題が出て開発は大幅におくれてしましまいます。ついには資金がきれてしまいました。投資してくれていた台湾の VCもサジをなげてしまいました。

オンライン、イーコマスのほうも追加の資金調達が追い付かず自分の金も底をついたのでどうしてもそれ以上ささえることができませんでした。 二人の起業家に済まないがもうこれ以上支えられないと宣言しました。 二人とも最後の望みを持ちながら頑張ってくれたのに最後にはわたくが支えらずついに会社をとじました。最後は従業員を全員解雇して当人たちも給料もなしで最後の締めくくりをしてもらいました。自分は家を売ってまで支える力はありませんでしたしまた彼らを2,3が月支える金もだせませんでした。ごめんなさいなんとか自分で頑張ってくれと言うしかありませえんでした。二人にはこの経験を生かして ここから立ち上がってほしいと祈っています。

もう一社テレコムニケーッションの会社は インターネトのバブル期の前後に2変 3変してたびたびの方向転換をしながら苦労しました。 IPO 準備終了ご 次の日についにマーケットがクラッシュ して、その後のいろいろな方向転換をしながら苦労しました。 その時に メインの投資家だったVC が 最後の最後まで 支えてくれました。しかし我に運なくついに会社を閉めました。 最後まで助けてくれたベンチャー キャピタルにいつの日にか恩返しができればいいなあとおもっていますが。 いつになることやら。

起業はただお金を儲けるためにやるのではなく世のため人のためになる 大きな使命を持ってしなければいけないのです。 起業するには自分にちゃんとした哲学があること。 使命感を持ってスタートしなければ挫折してしまいます。鐵造の使命かん 国家のため人のためという大きな志がひつようです。

本の最後にフランスの世界的な作家 アンドレ マルロー と出光 佐三 とのインタビユウの 様子が書かれています。30分の約束で始まったインタビュウは なんと3時間に及んだそうです。それももっぱらマルローの一方的な質問だったようです。マルロー は首を切らない会社 出勤簿のない会社に非常に興味を持ったのです。マルロー は出光の ”マルクスが日本で生まれていたら“ という本を既によんでいたので特別に彼に会いたかったようです。 マルローは日本でのモナリザ の展覧会のためにドゴール政権の文化相としての来日だった。マルロー の質問は 武士道から 仏教から日本文化などの広範囲にわたったようです。さすがは文学者そして歴史学者そしてマルローの最後に質問は なぜあなたはそれができたのかでした。 出光は “それは人を信頼していたから”でした。 マルローはさらにそれは国家でも同じかと問うた 出光はそうだといった。さすがにお互いに人を見る目をもった人物だったのです。

この本を読みながら数々のスタートアップに投資してきてそしていろんな危機に直面して苦労してきたが これほどに窮地を潜り抜けそして物事を成功に導いている 鐵造の人物に触れて大変感激した。 起業とは世のため国家のためにする大義名分も必要なのです。

これから起業する若者はこの本をぜひ読んでください。百田さんという作家のすばらしさ。 これほど迄に出光佐三 の業績を明らかにしてくれてほんとにありがとうございました。

出光 佐三 
が愛した仙崖 和尚の 双鶴画讃  鶴は千年亀は万年我は天年 と銘うたれています。