世界をあげiPad フィバーに包まれているようです。スティーブ・ジョブズの大成功に拍手を送るのはやぶさかでもないが、残念ながら日本から数百億円のお金がアメリカに流れてしまいます。この経済の停滞している最中に何と残念なことか。せめてこれが日本のメーカー、Sony,やPanasonicあるいはSharpだったらなあーとおもいます。

思えば15年以上も前にAppleの当時のCEO John ScullyがNewtonのコンセプトを発表して”ペンベースコンピューター”の到来近しと、みんなが期待したものでした。当時SanyoのLCD Displayを売るべく、Appleに持参していて、たまたまAppleの社員食堂でScullyにサンプルを見せたこともありました。しかしこの製品を構成する部品の未熟さによって、思うような性能が上がらずに、相当な金をつぎ込んだこのプロジェクトも、ついには放棄することになります。また、このためにAppleの経営がおかしくなり、John Scully其の人もついに、Appleをやめることになったのです。スティーブ・ジョブズを追い出した彼が、今度は自分が追い出される羽目になったのです。そしてご存知のようにそれから数年してスティーブ・ジョブズの返り咲きがあったのです。

当時の一番の問題はデジタイザーにあったとおもいます。Resolutionが上がらないことが一番でした。又文字認識の確度の低さもありましたが。当時このデジタイザーの良い物を作ろうとして、数社のベンチャー企業の人たちといろいろデスカッションを続けたり、プロトタイプを作ったりしましたが、良いものができませんでした。今のiPhone 、iPadも、デジタイザーの不完成性をうまくのがれるような使い方をして成功しています。さすがはスティーブ・ジョブズだと思います。

ものを開発するのに新しい性能の要求があります。もっと早く、もっとパワーを食わないように、もっと小さく、などとこれによっていろんな部品、製造方法が改良されていきます。たとえば半導体の技術の進歩、もっと早く、もっとパワーを少なくなどの要求がSub Micronのプロセスの開発につながり、それがメモリー容量を増やしてくれました。今なら電話の中に、すでに数ギガのメモリーが入っています。同じように、部品の進歩も又すごいものです。コンデンサーは小さくなり、電池は小型で長持ちしていく。ですから全体のレベルが上がって製品がさらに凄いものが出来るのです。

同じころ、1990年代初頭、Kamran Elahianと数人の人たちがペンペースコンピューターの会社「Momenta」を立ち上げました。Portableであり、電池Operationであり、当時のIBMのPCを置き換えようという意気込みで、優秀なエンジニアを集めて企業しました。日本からも三井物産の投資部門が相当な投資をしました。メディアの注目は凄いもので、毎週のニュースとしてとりあげられていました。Comdexのブースはいつも黒山の人だかりで、もうペンベースコンピューターがキーボードコンピューターを置き換えるような大騒ぎでした。しかしこれをサポートする世の中の技術はそれほどあがっていませんでした。電池の寿命が短かった。今のようにリチウムイオンの電池はまだ出来ていませんでした。また、思うに当時のデジタイザー(もちろん今も)のリゾリューションはまだまだでした。そして数百名の優秀なエンジニアを抱え、数百億の投資を受けましたが、ついに数年して会社をクローズせざるをえなくなりました。Kamaran Elahianは今も彼のFerraiにMomentaのライセンスプレートをかかげています。彼曰く、「大きな失敗こそ肝に銘じて墓標を立てておくべきだ」みたいなことを言っていました。しかし彼はこの失敗の後に数々の成功をします。Cirrus Logic, Neo Magic、Centillum communicationなどの企業を成功させSilicon Valleyの基礎に貢献しています。

以前、元ソニーCEOの出井さんの「通信とメディア」という講演会で、時の大スター夏野 剛さん(I-modeの父)のSpeechの後、出井さんに無理やり、質問ないか?と指名されたので、日本のコンピューターソフトの開発者は、これからあまり出ないだろうこれは大変なことだと意見をのべました。

「DocomoがI-modeを開発したので、日本中の若い人たちが親指だけを使って、もはやFull Key Boardのコンピューターを使うのを敬遠してしまうのではないでしょうか。そのために企業の効率が彼、我の差がひどくなり、益々日本は後れを取ってしまう。これこそガラバゴスになって世界に太刀打ちできなくなる可能性があるのでは?」

と 親指文化に警告を発して、大勢のひんしゅくを買ったことがありました。しかし後で一人の方が来て「平さん良いこと言ってくれました。」と言ってくれたので、ああ一人でも何か警告を発する必要があるのだなあと思い、溜飲を下したことがありました。

そこで今回のiPadのフィーバーに警告を発したい。

今一番必要な技術は デジタイザーです。これこそ我々漢字国民が開発する一番のテーマだとおもいます。iPadを超えるのはリゾリューションの優れたデジタイザーです。最近日本に来てポータブルの筆をみつけました(だいぶ私は時代遅れですが)。もし松尾芭蕉が生きていたらもっと俳句を書いたことでしょう。そして何と、昔の筆のように書けるじゃないですか。そして墨も一ヶ月はもっています。今これで時々漢詩をかいて楽しんでいます。あの筆をそのまま使ってデジタイザーに書いたら、筆の文字がそのまま書けるようになったら最高だとおもいます。まだまだコンピューターを使わない高齢者がたくさんいます。高齢化社会になって相当なビジネスを創出することができるのですが、もしあの筆のプレッシャーを再現できたら、そしたらコンピューターで絵が描ける、この筆を用いて色を選んでいけば何も画用紙を使わなくてもスケッチができる。いつの日がこのコンピューターを持って北八でスケッチできる日を夢見たい。

日本のコンピューターソフトの開発をしている若い技術者よ。是非iPadの上を行くコンピューターを作って日本の経済を活性化してほしいものです。そして大勢の若者が何時間も並んで買う姿をみたいものです。

そんなわけで私はiPadは買いません。iPhoneも買いません。Black BerryでFull Key boardを楽しんでいます。臥薪嘗胆して筆コンピューターが出来るまで待ちます。

皆さん、世界初の技術の粋を集めた未来のコンピューターを作ろうではありませんか。