07/12/27 木曜日12:05:57

企業家倶楽部へ記事を提供しました。
企業家倶楽部2008年1月/2月号より転記の許可を得ましたので掲載いたします。

 

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利益を優先すべき

企業の存続には売上げと利益をあげることが必要だ。赤字を続けると借入れをしなければならず、この借金を返却できなければ倒産してしまう。倒産後の救済は再生機構あるいは他社への売却などが考えられる。最悪の場合は会社を清算し、従業員全員が解雇となり多くの失業者を出してしまう。会社が大きくなればなるほど従業員の数が増え、企業経営は社会的責任が重いのだ。
そこで、企業は十分な利益を上げることを優先しないといけない。「社会貢献を第一とすべき」とは会社が存続して初めて言えることであり、利益なき経営は最終的に社会的責任を果たせない。いわんや会社が倒産して大量に失業者を発生させることは最悪だ。終身雇用制が重んじられた日本の経営は雇用第一で利益は二の次という考えが優先しているように思われる。しかし企業経営は利益を上げることを優先すべきだ。
企業の価値は、利益率と将来の発展性で評価され、それが株価に表れる。会社の価値が時価総額として、総発行株数と株価の掛け合わした値で評価される。例え何兆円という売上げをあげても大幅な赤字の会社の場合、評価はゼロといってもいい。
日本企業の利益率は外国企業に比べて低いようだ。利益確保のために企業経営の効率化を考えないといけないし、利益が確保できるようなマーケットに展開を図る必要がある。さらには国際化の波に流されないように自らグローバルな展開を考えないといけない。

 

(キャプション)
日米企業の売上げ、利益、時価総額などの一覧

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日米企業の比較

 

 世界的な企業各社の売上、利益、時価総額、従業員数、利益率を比較した表がある。エレクトロニクス、IT,・通信関係が主だが、比較のため自動社会社を入れた。この中で時価総額が10兆円以上の会社は7社あり、米国企業の利益率が10%以上と高い。またインテルはトヨタ自動車以上の利益を稼ぎ出しているのが分かる。
 日本企業の利益率を見るとキヤノン、任天堂 トヨタが約10%で他は3%以下だ。このデータを見ても効率がどんなに悪いかが分かる。かつてソニーの出井伸之氏が利益率10%を目標にすると言っていたが、グローバルな視点で最も適切な数字ではなかったか。企業効率の上位は、グーグルが他を引き離している。時価総額が売上の14倍に達している。軒並み米国企業の時価総額は売上げの2倍以上は維持している。一方、日本の製造業を見るとキヤノンのみ、時価総額が売上げの2.7倍以上で、その他の企業は売上げ以下か、わずかに売上げ以上といった状態だ。

 

国際的なM&A

 この表で見るとソニーの価値はGEの14%にすぎず、もし市場でソニー株を買うとしたらGEの僅か株式14%でソニーを買うことができる。勿論そんなに安くは買えないが、企業価値が落ちていくと買収のターゲットとなってしまう。そこで、企業は利益率を上げ、企業価値を絶えず上げていかなければいけないのだ。日本の代表的な会社が外国勢に取られる危険性がここにある。日本企業で利益1000億円以上の企業は、この表でトヨタを除くと 松下、ソニー、キヤノン、任天堂だけだ。これは半導体装置メーカーのアプライド・マテリアル社の利益にも負けてしまう。
 国際化が進む中で世界的なM&Aが活発だ。米国のM&Aは自社株を発行して金のかからない買収が多い。もしインテルが自社株の10%強を発行すれば富士通の時価総額1兆6000億円の株を買収できる可能性がある。市場から株を買い集めることによって大株主になることも可能だ。国際化に対応して国の基礎である半導体産業を守るには、これらの会社の時価総額を上げる経営を企てないと日本の基礎が失われてしまう。

 

大統領型経営の勧め

 日本の経営効率はなぜ外国企業と差があるのだろうか。日本とシリコンバレーの半導体企業に約30年勤めた経験から考察をしてみたい。まずは、何と言っても企業は人なりだ。社長の像がそのまま会社の姿になる。社長が明確なビジョンを持っていないと様々な場面でタイムリーな決定が下されない。組織が大きくなり無駄が増え、閉塞感が増している。したがって利益率が下がり始めても、それを改善する施策を打たないままに過ぎている。新しいことに挑戦し失敗すると減点主義で評価する文化も問題だ。今度は誰も挑戦しなくなる。日本型経営の大きな欠陥は「待ちの経営」と言える。
 卑近な例をあげると日本の年金問題がそうだ。歴代の大臣が行動を起こさずに待ちに行ってしまったからだ。
 また、日本企業の欠陥は部下がトップの言うことを聞かないことだ。あるいは抵抗勢力になっているケースがある。ここは海外企業との大きな違いだ。もし社長の命令に背く場合はクビになる。しかし日本では長い間部下の抵抗勢力が確立されており大きな改革が難しくなっている。アメリカの大統領は強い権限を持っており、大統領の命令に抵抗する人はいない。日本政府の苦労がそっくり日本の大企業の実情といえる。社長にアメリカ型の権力のある会社が日本でも利益を上げ成功している。明確なビジョンと戦略を基に決定を下し、改革を実行できる社長が優良会社を育てている。

 

ボトムアップの経営

 大統領型のトップダウンも必要だが、常に部下からの新しい提案を上司が受け入れることも重要だ。しかし、従来路線をかえるのはリスクが大きく、失敗を恐れる傾向がある。
 米国のオークションサイト大手イーベイ社長のメグ・ウイットマン氏がイーベイでの仕事の進め方を紹介してくれた。社員から様々なアイデアが出され、それを検討し良ければ直ぐに実行に移される。
 あるとき従業員が玩具のミニカーのオークションを提案してきた。そのアイデアは直ぐ採用され、玩具の自動車のオークションが始まった。すると今度は本物の自動車を売りたいという社員がいた。今では本物の自動車のオークションが大変盛んになっている。今年は100万台の中古車がイーベイで取引されたという。私の友人もイーベイで高級車のレクサスを約700万円で購入したと聞き驚いた。今日では当たり前のように行われている。
 このように従業員が提案してくる案件を真剣に検討し、よければ直ぐ実行に移す。私の友人は会社に提案したが受け入れられず、上司に相談したところ、「それなら自分で創業したらどうだろうか」と助言された。米国企業では社員が独立する際に勤務していた会社が資金提供するケースもある。その友人は私も資金集めを手伝いベンチャーを立ち上げた。その後事業を成長させ、大きな会社と合併して成功した。

 

社長交代劇

 最近の例では、ヒューレットパッカード(HP)がそうだ。シリコンバレー発祥のきっかけとなったHPでさえも、例外ではない。エンジニアを大切にすることで有名なHPウェイの継承者ルー・プラット氏も押し寄せるIT革命に乗り遅れてしまった。米国では事業の停滞は社長の責任なので、すぐに取締役会が動く。取締役は大半が外部の識者なので社長交代はすぐに決定された。そこで1999年、マーケティングのプロフェッショナルとして評価の高いカーリー・フィオリーナ女史が外部から招聘された。社長就任後、コンパックを買収し、HPに大変革を起こした。しかし、社長就任から6年が経ち、PC事業の不振や安定した成長が困難になった。そして2005年、取締役はフィオリーナ氏を解雇し、小売向けPOS端末販売大手で実績のあるマーク・ハード氏を社長に迎えた。日本は今この2人を合わせたような人を社長にしないと生き残れなくなっている。

 

エンジニアの役割

 企業を継続的に発展させるためには技術開発、あるいは新しいマーケットを展開する必要がある。そのためには、エンジニアリングマネジャーが重要な役割を果たす。日本の技術者は出世するとレポートを作成する事務屋になってしまう。米国のエンジニヤリングマネジャーはいつまでも技術の仕事をしている。絶えずに技術の動向を把握していないと他者との競争に負けてしまう。
 2006年にスペインで開催されたETRE(欧州経営者会議)で参加企業のCTO(Chief Technology Officer) に話を聞くと、彼らは毎年、大学の博士課程の学生とどんな研究をしているか、あるいは主任教授にどんな研究が行われているか絶えず調べているという。自社で将来使う可能性がある場合は、コンタクトを続け、資金を提供し新しい技術を取り入れる。それはCTO自身の勉強にもなっている。また、彼らは絶えず学会やコンファレンスに顔を出している。日本企業の開発部門長は書類作りに追われていないだろうか。シリコンバレーの経営者は今でもカンファレンスではいつも前の席に座り、関連技術の論文の発表などは熱心にノートを取っている。日本企業の経営者も真似して欲しい。

 

挑戦せよ

 今の日本の大手企業には優秀なエンジニアが集まっている。その人達が絶えず自分の力を磨き、そして新しいアイデアを提案し、まずは自社内で挑戦する。新しい分野を開く努力を続ければ、日本企業ももっと元気になるのではないか。そして自分の提案が会社の方針と合わず受け入れられない場合は、スピンオフしてベンチャーを起こせばいい。そうすれば、日本でも技術系ベンチャーがもっと誕生するだろう。最近では、日本でも創業ベンチャーを支援するベンチャーキャピタルが育ってきている。
「日本のエンジニアよ、挑戦せよ」

 

平 強(たいら・つよし)